何か奥の手でも秘策でもあるのだろうか、ショウは意味深に笑う。
「とりあえず、親玉この穴のすぐ前の建物にいるんだよな?」
「えっ?あ、はい…いるにはいますが…」
「?」
「多分親玉―――アンクライドっていう怪人なんですけど、そいつがいる部屋まではいくつか包囲網を抜けなければいけないって話が…」
「ほう、誰が?」
「町民が洗脳される直前、怪人に抗って建物に突入した人たちの中の生き残りです。」
"生き残り"ということは、もちろん死者もでている。
そのことを理解したショウは、拳を強く握りしめた。
「なるほど、事情はよく分かった。これは放って置くわけにもいかないな。」
そう言い、穴の出口のはしごに手をかける。
「お、おい、本当に1人で行くのかよ!」
そこでテルトはショウを呼び止める。
「あー、そうだなー。確かに1人で建物を襲撃して町中騒ぎになったらお前たちも見つかる可能性があって危ないか…。」
「そ、そう言う意味じゃなくて…」
しかしショウは1人で納得してしまい、
「オーケー、分かった。2人ともついてこい。なに、大丈夫。戦闘には入らせやしないさ。」
「ちょっ…何を勝手に…」
「行きましょう、テルト。」
「姉さんまで!なに考えてんだよ!?」
「私たちだって、このままぐずぐずしてても何も変わらないわよ。だから彼に協力して、私たちにできることをするの。」
「……」
姉が一度決めたら貫徹するという性格なのは重々承知のテルト。それを知っててのせいか、もう反抗するのも諦める。
「分かったよ、俺も行くよ。行けばいいんだろ!?」
「ははっ、分かりゃあいいんだ。」
「ただし、俺たちに何か大きな怪我でもさせたら、お前の責任だからな。」
「分かってるよ。そっちが無茶さえしなければの話だけどな。」
そういったやりとりのあと、ショウたちは穴を出て、建物の侵入を謀る。
「なぁ、ここの建物って裏口かどっかは無いのか?」
「無いわよ。」
キッパリ答えるキリナ。
「うわ、マジか…。じゃあ正面突破するしかないか…。」
少し面倒な顔をするショウだが、すぐに切り替えて真剣な表情になる。
しかし建物の中には、そしてアンクライドの正体は、彼らの予想だにしないような状況であるのだった。――――