お母さん。今『ユサ』は人国を出発して、人国と獣国を結ぶ山道を歩いています。
しかし、早くも問題が生じてしまいました。
山と山を結ぶ橋が、今にも壊れそうな程腐っていたのです。
「私とした事が……前もって偵察するべきでした………」
(でも、獣国に行くには必然的にこの橋を通らねばならないんですよね)
「はぁ………覚悟を決めましょう」
私は、フード付きの紅色マントをきつく体に巻き付けると、腐りかけの橋に足を踏み入れました。
ミシィ……
なんて、不吉な音なんでしょう。
「母さん、マー君、マー君のお祖父さん。私はどうやらここまでみたいです……」
人国の多くの若者が憧れた勇者、でも勇者になれたのは何億人のほんの一掴み。
その理由がやっと理解できた気がします。
「ハハ………」
私が苦笑いをするとどうじに足下にあった板が次々と落下していきます。
とどめには
ブチッ!
橋全体を繋いでいたロープが綺麗に切断され
私は引力に導かれるまま。山と山の谷底に――――
《その頃の人国》
「なぁ、じぃちゃん」
「なんだい?マー坊」
「ユサ姉大丈夫かな……」
「………まぁ、何とかなるじゃろうあの子なら。あの子はいたって礼儀正しい娘に見えるが……本当は
誰よりも諦めが悪い子じゃから」
「………危機一髪ですね」
―――――私は、谷に落ちませんでした。
実は
落下してる時、私は届けるように言い付けられた剣をすばやく腰から抜き取り、谷の壁に突き立てる事に成功したのです。
「けど………」
突き立てた剣は私の重さに耐えられなくなっています。
落ちるのも時間の問題かー。
「最悪の場合、このままいくと、剣も重さに耐えられず真っ二つ…………それだけは―――――――――嫌ですっ!」
私は自ら突き立てた剣を抜き取りました。
周りの人から見ると、ただの自殺行為です。けど、私からしたらこれが最善の策だと確信しました。
紅色のマントをなびかせながら
今度こそ私は谷に落ちます。