「っ!!…はぁ…はぁっ…」
俺は目が覚めた。パジャマが汗でベタベタして、気持ち悪い。
こんな未来を見るようになったのは、いつからだろうか。覚えていない。
思い出そうとするけれど、いつもその記憶は掴もうとする腕をすりぬける。
「ムウト。起きたか。」
気づけば俺の部屋には沢和奈さんがいた。
俺には両親がいない。
何時からいなくて、何故死んだのか。それすらも分からない。
そんな親がいない俺を引き取ってくれたのが沢和奈さんだ。
26歳、科学者らしい。
ボサボサの髪。
やたら高い身長。
得体の知れない液体で汚れきって、もう白衣とは呼べない白衣。
どこかにデザイン性と言うものを置いてきてしまったような人だ。
顔はいいのだから、服と髪型さえどうにかすれば、イケメンなのに…と、常々思う。
「沢和奈さん…」
「また夢を視たのか?」
沢和奈さんは唯一俺の『予知夢』の能力を知る人だ。
彼は俺の能力を信じてくれていて、何かと心配してくれる。
優しい人だ。手が温かくて。ぶっきらぼうだけど。
俺はベッドを抜け出して、ひとつ、大きな大きなあくびをした。