寺の鐘夕暮れ時や秋の山
逆上せたる頭を冷やす芭蕉かな
朝早く挨拶したる瓢かな
文月や夜の問答多きこと
此処其処と友と笑ひて草じらみ
山葡萄紫色の獣道
鵙鳴けば夜叉も戦く処かな
ただそっと筆運びたる夜学かな
幻想を描きたがるや秋の夜
俯きて畦道歩く秋の暮
芋掘りて生命感ずる手のひらや
鰯雲いよいよ棲むや最上川
虫たちやけふも叫びて夢うつつ
葛の葉や向こう三軒茶屋の庭
枝豆の八百屋に暫し奉公や
落鮎の群れを探して川往けり
苦しみの闇の前なり赤蜻蛉
遠かりき山の端見ゆる蝗かな
草臥れて稲穂を見やる車窓かな
稲妻や閃光走りて何示す
白菊の無垢なることを教えけり
青春の愛しき人や秋海棠
新涼や夕暮れ時の商店街
高円寺一駅乗りて荻の里
初秋や行き交ふ人の波と波
分け隔てなき心あり相撲取