「おい、邪魔だからどいてくれないか」
「私は誰でしょう」
「言わずもがな」
「亀吉に御座います」
「だろうな」
「どうして存じ上げておられるのでありますか」
全く妙なやつだ
「その顔は亀吉だろ」
「バレましたか」
「バレるさ」
「それよりも、浦島様遅いではありませんか」
いきなり和頭を転じたと思いきや、亀吉の声がでかくなった
それを喚起すると、そう言われると照れますなぁ
とまたわけのわからないことを言った
全く話にならないが、おそらく例のことを言いたいのだろうなと思ったのでこっちから訊いてみた
「なんだ、あの手紙のことか」
「左様に御座います」
「あの手紙、祝勝会の開催時間なんて書いてなかったし…」
「左様ならばご機嫌よう」
亀吉の言葉はシカトして続けた
「そもそも竜宮城への行き方がわからないではないか
しかも、あの手紙の内容はなんだ
奇天烈な出席の条件に相手を馬鹿にしたような…」
ここで、また亀吉は僕の言葉を遮った
「それでは、今から三名様を竜宮城にご招待いたします」
「おい、さっきから僕の言葉を遮ってどういうつもりだ
なぜ、無視する」
「いいえ、そういうつもりでは御座いません」
「じゃあ、どういうつもりなんだ」
「実はあの手紙、その殆どが冗談の塊のようなもので、いずれにしても参加するには私の同行が必要となりますゆえ
急行成増行で御座います」
「東西線か」
「まぁ、そんなところでしょう」
「じゃあ、冗談でもせめて、
これは冗談に成増行(ただし、亀吉の同行が必要)
とぐらい書いてくれ」
「それぐらいは浦島様も存じ上げていると思いましたので」
「そんなの知るか」
「ですから、あの手紙に書いてあった参加条件や言葉図解は冗談図解として受け入れて下さいませ」
「意味がわからないから嫌だ」
「隠岐を悪くなされましたか」
「隠岐?」
「すみません、お気に御座います」
「そう言われるとそうかもしれない
亀吉の冗談というか言葉遊びというのに付き合いきれないところがある
でも、あの手紙は冗談だから気にしないで受け入れて欲しいというなら受け入れないわけでもない
でも、一つ気になる点がある」
「何で御座いましょう」
「あの戦に勝ったのは本当だよな」