「さっきは私の病気のことは話しても無駄なようなことを言ったけれど、一応参考までに話しても差し支えないと思うから話すわ」
そう言うと、なぜか織姫は深呼吸をした
そして、再び話し始めた
「私の場合は自分の神通力が使えるのにも関わらず、流れ星特急に乗って海に入る手段を選んでしまったの
院長の為杉先生にはそれによって心の中のブルー度数がわからなくなって発症したと診断されたわ
その後、為杉先生に君の場合は一過性のものだから、すぐに治る
そう言われて、一週間もしないうちに退院できたわ
あれは、おそらく為杉先生の適切な療法のお陰だったんだなって思うの
今思い返すとあの先生はすごい方だったと思うの
それから…
あっ、ごめんなさい
あたしひとりでこんなに喋っちゃった
そんなことより、早く病院に向かわなきゃ」
すると、彦星はまだ何か言いたげで、頭についている花をくるくる回していた
「何、あなた
言いたいことがあるなら、言って」
彦星は花をくるくる回しながら言い出した
「そう言えば、君の時は度肝を抜くような早期発見の八剣伝ならず、発見伝だったな」
織姫は呆れたような顔をしてはぁ、と息を吐いた
そして、彦星に言った
「何、そんな冗談を言いたくて頭の花を回していたわけ、本当に呆れるわ
あなたの言動には
やっぱり、あなたにはついていけないかも
申し訳ないけれど、七夕もなくていいかな
なんて思っちゃう」
「嘘だろ」
「えぇ、勿論
そうでなかったらそもそもあなたと契りを結んでいないわ
冗談を言われたら、冗談で返す
それが、織姫スタイルよ」
彦星はなぜか、さっきの織姫の言葉を本気にとっていたらしく、今の言葉を聞いてほっと胸を撫で下ろしたようだった
「まぁ、今の冗談話はもういいから早く行くわよ
飛ばして10分で着くわ」
「10分!?」
「えぇ」
「何ですか、ウラシルさん」
「あのぅ、そう言うんだったらウラシルじゃなくて浦島なんですけれど」
内心どっちでもよかったがあえて訂正を促した
「あら、それは失礼しました
では、改めて訊きますけれど何ですか浦島さん」
「だって、ここまで来るのに何時間もかかって相変わらずこの様だ
本当に10分でそんな立派なお医者様のところへ着くのかい」