「えぇ、勿論」
織姫は確信に満ちた表情で言った
二重瞼の大きな目に、端麗な佇まいはやはり美しい
古代から言い伝えられている織姫という一人の天女―もっと、古風な顔立ちでもいいはずだが、今目の前にいる織姫は今にもテレビ出演のオファーが来そうなくらいテレビ映えのする現代風のはっきりした顔立ちである
どこか、女優の柴咲コウを思わせる容姿でもあった
そんな見目形麗しい織姫、彦星とともに性格にちょっと問題があるというか、ただ単にコメディ好きなだけなのかもしれないが、二人はお似合いであった
ふと、そんなことを考えると僕も恋がしたくなるのであった
恋の方程式は難解だ
なんて考えるくらいだから、数学は好きだが、得意なほうではない
前にも断わっておいたが、むしろ数学関しては勉強しても筒抜けでどうも頭に入らない
まず、初歩の計算が苦手だ
じゃあ、なんで恋の方程式なんて言葉が浮かんだのか
やはり、どこかで恋と数学を結びつけて解決してみたいからなのだろう
しかし、またここで考え直してみたがやはり恋というのはもっと難解で、そもそも方程式で成り立つほどの理屈ではないのだな
なんて思った
すると、なぜか安心しながらも残尿感に襲われるのであった
やはり、僕の頭もどうかしているな
そんなことに思いを廻らし、頭の中で様々な思考が行き交っていると、いつの間にかワープしたかのように大きな古い病院に着いた
「早い」
何に感心したのか、思わず口に出して言った
「10分じゃなくて、10秒だったわね
病院だけに…
あら、変なおやじギャグ移っちゃた
しかも10秒とか、英語にしたらテンミニッツだしー
むしろ、天ミニッツぅー
病院と全然関係なうぃー
ウィリアム・テルぅー△〇ε□↑〒…」
病院本体はさほど大きくない
見た目を大きくさせているのはこの古い病院の回りに密集した珊瑚やそこに生えた大きな梅の木によるものであろう
そして、外装には沢山の扉があった
大きさは大中小様々で、鰯などの小魚サイズから中型の人間サイズ
そして、鯨サイズなどの大型ほ乳類のサイズまであった
病院の看板のようなものには
「精神科・心療内科」とあった
この時、僕は人間以外の精神世界は高度に発達していない動物や人間よりも苦しみの少ない天人も精神病になるんだなと不思議な気持ちになった