会社から帰ると待ってましたとばかりに喜美が話し始めた。
「ねぇ、あの方ね、あ…由梨絵さんって依うんだけど、とっても可哀想なの。
ご主人を去年亡くされて、その家に住んでるのが辛くて最近こちらに引っ越して来たんだって。
子供さんにも恵まれたんだけど、死産だったそうよ。女の子だったんだって。生きてたら私位らしいわ。
だから私を見た時に娘の様な気がしたそうよ。
私も早くに母を亡くしたでしょ。
私も由梨絵さんが母みたいな気がするのよね…
由梨絵さん、昨日も発作おこしたでしょ?
身体があまり強くないらしいわ。
だから毎日は働けないって。
ご主人の保険が有るから食べてはいけるそうなんだけど…」
一気に喋ると大きな溜め息をついた。
「どうかしたのか?」
「今度、由梨絵さんをお食事に招待したいんだけど…駄目かな?」
「何だ、そんな事か。
構わないよ。喜美とも気が合うみたいだし。
で、いつ招待するの?」
喜美はニッコリ笑って
「多分、貴方はそう言ってくれるだろうと思って、もう今週の日曜日で約束しちゃったの!」
「とりあえず、腹が減ったから御飯にしてくれないかな?」
「あ!ごめんなさい!」
喜美は慌てて台所へと向かった。
その姿を見ながら、ホッとしている自分が居た。
慣れない土地で、私には元気に振る舞っていたが、ここ最近は口数も減っていた。
母親か…私の母は今年72歳になるが、まだ元気である。
気のキツい母は喜美とはあまり合わないらしい。
それは勿論、喜美も同じだった。
だからこそ、由梨絵の様な物静かな優しい母みたいな女性を慕ってしまったのかも知れない。