悲愴の水使い?

ROCO  2005-03-03投稿
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言わなくてはいけない。
アリスにこれ以上ついてきてはダメだと言わなくてはいけない。今引き返せばまだ間に合う。
「アリス…」
「な〜に?」
「……ここから先は本当に危険。引き返してほしい。」
「何言ってるの。ここまで来て引き返すなんて無理よ。」
「…死ぬかもしれないのに?」
するとアリスはそっとサラを抱きしめた。
「そんな危険な所に小さなあなたをひとりで行かせられないわ。」
「……私は死ぬことなんて怖くない。」
するとようやくサラを解放する。
「だけどダメよ。私はあなたに死んでほしくないの。」
「……」
あぁ…とんでもない人を助けてしまったとサラは思った。
「分かった。なんとしてもあなたを地上に帰す。」
「2人でよ。」
とてもめずらしいことにサラは少しだけ微笑んだ。
「あら…」
いつも無表情なサラがめずらしく笑ったのでアリスは驚いた。笑ったことにではなく…
「あなたそうやって笑えば美人よ。もっと笑うようにすれば?きっとどんな男もいちころね。」
「いちころ?」
「今はまだ子供だと思って相手にしないでしょうけど、もう4、5年たてばモテるわよ。」
「…私は子供?」
「あら…違うの?12、3歳だと思ってたけど…」
「私は15歳。」
「あら、そうだったの。すごい童顔ね。」
しばらくそんな会話を続けた。サラにとってこんなに長く会話が続いたのは初めてだった。
「……」
突然サラが立ち止まり黙って奥を見つめた。
「どうしたの?」
「妖気が近い。すぐそばにいる。」
サラは身構えた。妖魔の居場所を探すため全神経をそそぐ。
すると突然地面がひび割れてそこから妖魔が体をだした。
「ガァァ!」
親の妖魔は子供の倍以上に大きい。
『清き水の子よ、刃となりて魔の者を切り裂け』
子供の時と同じ魔法だが、サラは魔力を強めた。
「ガァァァ!」
水は剣のように妖魔を切り裂いた。しかし妖魔は少しも怯まなかった。
「……」
サラは唇をかんだ。これは全力で戦わなければならない。
『深き水の精よ、魔を切り裂く剣となれ』
さっきよりも水の勢いが激しくなった。容赦なく妖魔を切り裂く。
「ガァ!」
よほど痛かったのか、妖魔は地面に穴を掘ってもぐっていった。
「逃がさない」
サラは急いで後を追った。
「あ、ちょっと待って…」
自分も後を追い叫ぶアリスだが完全にサラを見失ってしまった。
「う、嘘でしょ…。」
ひとり暗闇に残されアリスは立ちすくんだ。

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