一足の草鞋につきし竃馬かな
稲雀瞬きをせば雲の上
何しても光のごとし秋の日や
嬉しさも哀しさもある鉦叩
西東北を向きても南瓜なし
一輪の菊で目覚めるいのちかな
白米の中に見つけし黍の粒
桐一葉次第に土に変はりけり
鶏頭の目に映るごと彩られ
音もなくそっと飛びくる小鳥かな
ドレミファソ木の実降る音当たりたる
コスモスの君としづかにゆれてゐる
道往けば日の当たりたる石榴かな
始まりも終はりも同じ川の鮭
零戦が空飛ぶあの日さつま芋
爽やかな風爽やかな笑顔あり
鹿の啼くいのちの声の響きあり
削りたる生姜の病癒しけり
唐辛子唾(つばき)の出でる真紅の実
蟷螂のけふは餌なし腹すかし