喜美はカレンダーを見ていた。
由梨絵と出会ってまだ10日程しか経っていない。
喜美は自分を人見知りの激しい方だと思っていた。
事実、此所に越して来てもう何ヵ月も経つのに、近所とは未だに挨拶位の付き合いである。
親しくなろうと努力はしたが、会話の中に入っていけなかった。
しかし、由梨絵とはアッと云う間に親しくなった。
「こんな事も有るんだわ。」
由梨絵は優しくて、落ち着いてて、控え目で、何よりも母の様な暖かさを感じさせる。
「尚輝さんのお母さんが由梨絵さんみたいな女性だったら良かったのにな…」
本当は仲良くしたかったのに、喜美を傷つける事ばかり口にする。
そんな事を思い出して、少し憂鬱になっていた。
毎週、月、火、水の午前中は由梨絵は仕事に行っている。
今日は、仕事の帰りに寄ってくれると言っていた。
時計を見て、遅いな…と、思っていた時にチャイムが鳴った。
「由梨絵さんだわ!」
喜美は玄関へ急いだ。
「いらっしゃい。お仕事お疲れ様でした!」
喜美が言うと、由梨絵はいつもの様に微笑んだ。
「ちょっと寄り道してたから遅くなってしまったの。
ごめんなさいね。」
由梨絵はそう言うと、喜美に携帯電話を見せた。
「これでいつでも喜美ちゃんと連絡とれるわ。
何かあれば直ぐに飛んでくるわね。」
由梨絵の気持ちが嬉しかった。
「喜美ちゃんの番号とメールアドレス入れてくれないかしら?
私、こういうの苦手で…」喜美は由梨絵から携帯を受け取った。
「登録出来ました!私の方にも由梨絵さんの情報を入れておきますね。」
手馴れた感じで携帯を扱っていると、由梨絵が遠慮がちに言った。
「もう一つお願いがあるんだけど…。喜美ちゃんの写真を入れても良いかしら?」
喜美はちょっと驚いたが、「私の顔なんかでイイんですかぁ?照れくさいけど構いませんよ。」
そう言って笑った。
携帯で喜美の写真を撮って、今日は用事が有るからと帰って行った。
「やっぱり由梨絵さんって少し変わってるわ…。」
嬉しそうに帰って行く由梨絵を見ながら、喜美は苦笑いをした。