謎子さんの言わんとすることが俺にはすぐわかった。
「袋がやぶれたか何かして落としたと?」
「そうです。ほらこの通り。」
そう言ってオレンジの保持を片腕で器用にこなしながら、ズボンのポケットからどこにでもあるレジ袋を何故か自慢気に取り出す謎子さん。
袋には巨大な穴が空き所々伸びきっていてどう見ても使い物にならない。
「全く最近のレジ袋は強度が足りません。」
「いや。その袋の大きさを考えるに明らか重量オーバーだったと思うんだが。」
一体どうやって詰め込んだんだ。
「オレンジを二つの袋に分けて運べば良かったんじゃ。」
「それは嫌です。」
「どうして?」
「だって荷物は一つに纏まっていたほうが楽チンじゃないですか。」
「………」
気持ちは解らなくもないがそこまで拘る必要ないと思う。ていうかこの娘ただの横着者じゃ。
そんなことより。
「袋が無いんじゃ仕方ない。このまま持っていくしかないな。」
「……それは私の家まで来るということですか。」
「まあそういうことになる。」
答えると両手にオレンジを抱え直した状態で考え込む謎子さん。
「……家に来ることは構わないのですが、今回のことは私に非がある訳ですし、荷物運びまでしてもらうには…。」
なんだ今までの態度とは裏腹に殊勝なことを言うじゃないか。
「別にいいよ、これくらい。どうせ暇人だしさ。」
「そうですか、じゃお願いしますね。」
………もう少し渋るかと思ったのに、こうまであっさり了承されるとは。
「では家まで行きますので。行きましょう。」
そうして俺達は歩き始めた。
なんだかなぁ。