あたしは昨日、彼氏にフラレたの。
でもね、あたしはグズグズなんてしないから。
彼氏が嫌いだったわけじゃないの。大好き、今でも。
泣いてたらみんなに迷惑かけるし、次の幸せはやって来ない。
綺麗事だけど、そうでも言い聞かせないと、涙がでちゃうでしょ?
「おっはよ〜!」
「あ、実優。良いの? 圭斗のこと……」
「うん。いいの、いいの! みんなは気にしない」
あたしがそう言うと、みんな顔を見あわせて、口を気まずそうに固く結んだ。
あたしが昨日泣いていたのをみんな見ていたから、心配してくれていて……。
ほら。「自分は不幸だ〜。もぉいやだ〜」なんて下を向いて泣いてないで周りを見渡せば、温かいもの、あんじゃん!!
圭斗。あたし頑張る!
あんたにフラレても、頑張る!
あたしの悪いところ、この中で直すから!
大好きっ!!
3日後。
やっぱり、幼馴染みのあたしと圭斗は、帰り道、ばったり逢ってしまった。
「なぁ……おまえ、オレがいなくても大丈夫なんだな」
……大丈夫じゃないよ。
でもね、
「夏那たちのおかげな。それにさ、なんにも始まんないじゃん。圭斗、大好き。でもね、あたしのことが好きじゃない圭斗に無理矢理あたしの気持ちを押しつけちゃだめでしょ!?」
「……実優」
「ん?」
ドキリとした。
3日ぶりの、あたしを呼ぶ声。
「……おまえ、俺より強いな」
そんなことない。
強かったら圭斗のこと諦められるはず。
「圭斗は優しいよ。圭斗はあたしに恋愛感情が無くなったら、それをちゃんと伝えてくれた。……それに、今も話しかけてくれたでしょ!?」
泣き出さないように、押さえ込むみたいにしてペラペラしゃべるあたし。
「…――、――――…。」
「ん? ごめん、聞こえなかった」
「いや、何も」
「そっか、じゃあね」
「ああ」
圭斗が家へ入っていく。
あたしも2件先の家へ入る。
玄関の扉を閉めたとたんに溢れた涙は、やっぱり悲しい味がした。