黒い長髪は後ろでしばられ、黒いコートの下には、黒いへそをだしたタンクトップ、黒い長ズボン。黒の革靴。そして背には―黒い輝きをもった鎌。顔はひどく整い、ややつりあがった紅い瞳は、すべてを見透かしてしまいそうなほど、すんでいた。
青年が私の手の甲に口づけする。
「お姫様、お迎えにあがりました…」
そういって青年は立ち上がって私に手を差し出した。
「はい…」
そういって私は手をとる。この手をとってはいけない気がしたのに…けれど私の頭はまるで催眠術をかけられたみたいにもうろうとして。
私が手をとった瞬間、足もとの炎が消えた。すると私の意識はもうろうとしてきた。目の前が暗闇へと包まれる寸前、青年のゆがんだ唇が見えた―\r
こうして、私はこの世界から、姿を消した。