三年生は「頑張れ」とエールを送ってくれた。悔しいはずの三年生。だが、三年生は誰1人として一年生の前で涙を流したりはしなかった。
「翔貴…?」
翔貴が恐い目付きで、観客席を見ていた。今までに見たことのない瞳。
「翔貴」
どこからか、しらない女性の声がした。
「夏々<なな>」
呟く翔貴。夏々と呼ばれた女性。ただ1つわかった。容姿が似すぎている。真っ黒な髪。瞳の色。目。笑いかた。翔貴の妹。
「長谷川夏々。翔貴とは実の兄弟です。苗字は違うけれど」
翔貴に兄弟が居たとは
陸斗も知らなかった
私達はただ唖然と
立ち尽くすだけだった。