遼一は、朦朧とした意識の中で声を聞いていた。
妙に、はしゃいだ女の声だ。しかし、その声は女にしてはどこか太い。声の主達は皆オカマだった。
「恐らく過労で倒れたのね。睡眠不足と疲労と緊張。命に別状は無いわ」
リーダー格らしい声がいった。
「そうかぁ。よかった。イッコーさん医者みたい。カッコいい!」
愛とカバちゃんが顔を見合わせて言う。
「彼の身元を確認出来ないか持ち物を調べたんだけど…。ハルシオンにロヒプノール、サイレースにドグマチール。薬が色々出てきたわ」
「ええっ!もしかしてジャンキーなの?優しそうな人なのに。ヤバい人かしら」
愛が心配そうに言う。
「いや、違うわ。常習者と言うより治療中といった感じね。薬に心当たりがあるわ。ほとんど睡眠薬ばかり。あと胃腸薬ね。彼も私と同じ心に傷を負った人なのかも」
イッコーが寂しげに呟く。
「早く着替えさせないと風邪引いちゃうわよぅ」
カバちゃんが遼一のジーンズのベルトに手をかけた。
愛とイッコーの目がニヤケる。カバちゃんがジーンズを引き下ろそうとした時、遼一は蘇生した。
遼一は、ほとんど無意識の内に正拳突きをカバちゃんに放っていた。