「アイドルのタクヤとかのチームです。彼らは非常に手強いと思います。何かご存知かなって」
遼一は探りを入れた。スマチームがリタイアしていなければ、やはり優勝争いに絡んで来るだろう。弱点などないだろうか…。
「いや、知らなかったわ。ホント?チームの名前はゴールで聞いたけど」
「いやぁん。タクヤと同じレースに出てるって考えると興奮するわぁ。ね、愛ちゃん」
カバちゃんがくねくねしながら言った。
ふふ。本当にこの人達はレースなんか二の次なんだな。遼一は苦笑した。
「すっかり長居をしました。お世話になりました。お互い頑張りましょう。それでは」
「バイバイ遼一君」
遼一が部屋を出たところで、イッコーが追いかけてきた。
「待って。話があるの。気を悪くしないで聞いてね。遼一君、ひょっとして自律神経系の病気とかじゃない?余り無理しちゃダメよ」
「ふふ。病気?例えば?」
「うつ病とか…。薬をみたの。睡眠薬なんかを」
「参ったな。まぁそうです。自律神経失調症。抑うつ症状。胃潰瘍。逆流性食道炎。などなど」
「どうしてそんなに強いの?精神力だけで生きてる感じ。気力って言うか…」
「イッコーさん、あなたと同じですよ。性分というか。譲れない何かが他人より強いだけ。あなただって、そうだな、パニック障害とかないですか?」
遼一が真っ直ぐ見詰めて言った。
「よくわかるわね。そうよ。心に闇を抱えているようなものよ」
「だからといって、生き方を変えられますか?」
イッコーは首を横に振って微笑んだ。
「理屈じゃないのよね」
「そうです」
「ありがとう。かえってアタシの方が勇気付けられたみたい。アタシ達は遼一君のチームに全面的に協力するわ。チームメイトによろしくね」
その頃、神野 実穂は疑心暗鬼に陥り泣いていた。