髄まで愛した一生#2

しんとも 2013-08-20投稿
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狭い階段を一段降りる度に、ふわっと、心臓に巻き付いてきた。



それはやがて、声となって現れる。



『ここは怪しい。引き返せ』



一瞬の好奇心は、いつものように、自分自身で抑えつけようとしていた。


しかし、そんな思いとは裏腹に、その足は歩みを止める事はなかった。



普段ならとっくに引き返していたろう。いや、この階段を降りる事さえしていなかったろう。



適度に回ったアルコールが、自制心を麻痺させていたのか。それとも好奇心か。



妙に、あの看板の言葉が頭にひっかかっていた。



『あなたは本当の愛に出会った事がないでしょう。あなただけの本当の愛の形を教えます。』



まだ会ってもいない人に対して、ずいぶん上から物を言うじゃないか。



おそらく下らない占いか何かだろう。適当な事を言って、もっともらしく一万くらい持っていく。どこにでもある、ゲスな人間商売だ。



それでも妙に惹きつけられたのは、なんとなく言葉の切り口が斬新であって事と、それを目にした自分自身に、自覚があったからかもしれない。



いつの間にか扉の前に立っていた。



『者楽遊』



納得する答えがその先にあるのか?おそらく無いだろう。俺はただ、馬鹿にしたいだけなのかもしれない。おもいっきり。


『愛の形か。教えてください。』



一呼吸ついて、扉を開けた。



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