ギィ…ト‥ ギィ…ト‥ 階段の軋む音が響く… 娘も妻もぐっすり寝ている。起きる気配は無さそうだ。それならば、一家の大黒柱である俺がこの状況を何とかしなければいけないだろう。そっとドアを開ける。何かいる……!!真っ暗で何も見えない。闇の中で何かうごめいている。冷や汗が落ちる。目が暗闇に慣れてきた。すると‥黒い妊婦服のようなものを着た女が這いずり回っている。まるで蜘蛛のようだ。髪の毛は非常に長く、痛んでいるのか何本か逆立っている。俺は何故かはわからないがその不気味な動きに見入ってしまった。ん……?動きが止まった。俺はその女の次の行動をあまり考えたくなかった。その女はゆっくりと少しずつこっちに顔を向ける。見るのをやめることはできたが、何故か金縛りのように不思議に目を離せなかった。痛っ!目に汗がしみ込む。え?あの女がいない?足元で何かが荒い息を立てている。俺は目を合わせない。足元の何かはゆっくりと手をのばし俺の顔をつかみ自分の方に顔を向けさせようとする。力いっぱい振り払おうとする。多分この何かはさっきの女だろう。女の笑い声が響き渡る…。頭がただひたすら恐怖に駆られ、少しずつ意識が薄れる…。