Episode.5
薄々
分かり始めた
僕のこの霊体は
長くは持たない
それは、僕の霊体として
この世に留まる理由や意志が
弱いからなのだろうか
「…ふう、掃除完了♪」
千奈が全ての部屋の掃除を終え
居間に戻ってきた
(ご苦労様)
思わずいつもの癖で
声をかけてしまい
あぁ、聞こえないんだと
苦笑いした
すると
「今…優の声がした…」
千奈が急に顔色を変え
辺りをきょろきょろと見回した
僕は驚きで固まってしまった
(千奈…霊感なんて
全く無いのに何で…)
僕は小さな希望を込めて
もう一度名前を呼んでみた
(千奈、僕はここにいるよ)
千奈ははっとして
今度はしっかりと僕の方を見た
「…また」
千奈は僕の方を
正しくは何も無い空間を
しばらく見つめていた
しかし
小さく首を横に振り
無言で自分の部屋へと
戻ってしまった
「疲れてるのかも…」
千奈の部屋から
小さくそんな声がした