Episode.10
優は
とっても優しい人だった
温厚で
あったかくて
よく笑って
几帳面で
しっかり者で
面倒見が良くて
爽やかで
涙脆くて
時々可愛くて
世界で一番優しさで溢れてた
私は出会ってすぐに
強く優に惹かれた
こんなに素敵な人がいるんだ
ってすごくびっくりした
本当に彼が大好きだった
心から、愛していた
―だから私には分かる
私は居間の中心にある
二人掛けのソファーに
置いてあるクッションを見た
…やっぱり左側にあった
優はこのソファーに
クッションを抱えて
左側に座るのが好きだった
そして移動する時は必ず
左側にクッションを置いて
私に座られないように
彼なりのささやかな
マーキングをしていた
私は一人になってから
優のその癖を忘れて
クッションを
中心に置いていたのだ
涙が頬を伝いおちた
また一粒、また一粒
「優っ……
優…いるの……？
ここにいるの…？」
私は泣き崩れた
すると、温もりを感じた
懐かしい匂い
まるで見えない誰かが
私の頭を優しく
撫でているようだった
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