家が異常に燃えさかっている。実は冬のこの地域は放火魔が毎年続出していた。ちくしょう!こんな時に!由美は美代に抱きつき泣きじゃくっている。俺は台所から包丁を持ち出して入り口の髪の毛を切ろうとするが切っても切っても伸びてくる。俺はそれならばと、隙間から手をのばす「ミヨー!ユミを抱いて手を掴め!」美代が手を伸ばす。わずかに届かない‥あの女は笑っている。燃えさかる天井や柱が落ちる。最後の力を振り絞る。「ミヨー!!ユミー!!」「あなたぁ!!」「パパァ!!」ドギャ天井が落ちると共にあの女の笑い声が聞こえる……。連れていかれてしまった。俺は意識がもうろうとして救急車で運ばれた。それから退院して今に至る。未だにあの時の悪夢が俺の睡眠を妨げる。俺は決意してお坊さんを尋ねた。お坊さんは何も言わなくても全てを見透かした。あの女は生前に子を身籠ったまま旦那に殺されたという。そして、一人であの家にいるのが寂しくて妻と娘を連れていったという。話を聞いた俺は怒りと悲しみでいっぱいだったが悪夢とおさらばする為にあの家跡へ向かう。花束を供え強く念じた。「成仏してください‥」俺は涙が止まらなかった。空が赤く染まっている‥