ピーチにはいやになる。オレがキスを迫ろうとするとすぐに逃げるのだ。いや、全然そういう仲じゃなければ当たり前なのだが、オレたちは付き合ってる。付き合ってりゃキスくらい当たり前じゃないか。
「なあピーチ。キスさせてくれよ」
「結婚するまでいや!」
「んな古風な……」
オレは車を飛ばし、海へ行く。浜辺に出て、海に向かって叫ぶ。「ばかやろー」
海が怒って津波を起こす。オレは流される。これも何もすべてピーチのせいだ。ピーチがキスさせてくれないからいけないんだ。
びしょびしょになったオレがアスファルトに倒れていると、人影が。見上げれば、ピーチだ。
「たけちゃん」
「ピーチ」
「心配してたんだから」
おっ何かいい雰囲気だ。これはまさかキスチャンス到来かい。
ピーチが唇をオレの唇に近づける。
「やっぱりダメ!」
ピーチはすごいスピードで走り去った。
「うっうっ」
オレは情けなくて情けなくて涙が出てくる。「へーっくしゅ」
車がやって来た。
「たけしさん乗りなよ。ドライブに行こうよ」
オレは起き上がり、車に乗って飛ばした。「ピーチのばかやろー」「たけしさん。ピーチちゃんに嫌われてるんじゃないの」「うるせー」
走る走る走る。
オレは情けない。涙が止まらない。キスしたいキスしたいキスしたい。
飛ばし過ぎて、電柱にぶつかる。オレは車から放り出され、アスファルトに倒れる。また人影。またもやピーチだ。
「たけちゃん」
「ピーチ」
「心配してたんだから」
おっまたもやいい雰囲気。今度こそ今度こそキスか。いやキスだろ。完全にキスだろ。そういう流れじゃないとおかしい。報われない。
ピーチが唇をオレの唇に近づける。
夕日に照らされるオレたち。
カラスがかあかあ鳴いていた。