運動大嫌い
面倒な事大嫌い
束縛大嫌い
な俺が、なんやかや始めた空手
道着何て物も、大枚はたいて買ったりして
筋肉痛に苦しみながら、毎日毎日稽古に励むようになった。
何でかな?
ま、いいか
ともかく稽古についていくだけで必死
息はあがりまくるし足は上がらないし
フラフラ…
それでもK先輩のハイキックに憧れて、あのハイキックを俺も!みたいな気持ち
夢のまた夢だけど
入門からひと月程した時、K先輩やその同期の先輩から誘われて飲みに
皆優しい先輩達で、思わず飲み過ぎる…と、口も滑る…
あの…K先輩は何で黒帯じゃないんすか?
K先輩以外の先輩は同期なのに皆黒帯
Kさんは、腰と膝やっちゃったんだよね、それに、俺達と違って働いてるからさ、忙しいんだよ、道場にも片道二時間位かかるからなかなかね、稽古に来られないんだ…
と、石山先輩が教えてくれた。
でも、Kさんは黒帯なんだよ、実力は、先輩達もそう言ってるんだよ…
と森田先輩が教えてくれた。
その時K先輩がトイレから戻ってきた。
K先輩、本当は黒帯レベルなんすねぇ!と馬鹿な俺は軽口を叩いた。
K先輩は、そんな事ないよ、黄色だよ
と、ただ笑った。
そうなんすか?
あ、つうか師範代にメチャクチャ言われててムカつかないっすか?
と馬鹿丸出しで俺は聞いた。
都丸君!
と石山先輩がたしなめた。
あ、すんません…
大丈夫だよ、そうだよね、確かに師範代にはね…
K先輩は穏やかに話し始めた。
僕はね、師範に憧れて入門したんだよ。
強くなりたくてね、
知ってると思うけど、僕はノイローゼでさ、高校中退したんだよ。
正直キツくてね。
だから少しでも自分が強くなれたらってさ…
師範代の罵詈雑言も自分のためだと思ってるんだよ…
そうなんすか、俺はムカついてムカついてしょうがナイっすよ!
そうだね…
ねぇ都丸君、今もしここでブロック割ってって言ったらどうする?
そんな無理っすよ〜絶対無理っすよ〜
そうか、なら都丸君は死ぬまでブロック割れないね。
え?
都丸君、僕はブロック割ってって言っただけで方法は言ってないよね?
え?あっ!
手で割ると決めつけたよね?
別にハンマーで割ってもいいし、足で割ってもいいんだよ。
あっ…