予約しておいた店は個室がある居酒屋だ。電話で二人と告げていたためか二人で満杯の向かいあった個室。店は、ルリコの好みが魚貝類ということもあり、和風な雰囲気を選んでいた。
黒のダウンコートの上着を脱いだルリコは、タイトな黒のスカートにピッタリした白のタートルのせいで、細身が更に細く思えた。
乾杯のビールと食べ物を頼むと店員が襖を閉めて出て行く。沈黙が漂った。お互い目線が合うと少し微笑んで目をそらす。店員が飲み物と付き出しを持ってきた。二人は乾杯する。
「なんか初めてだとドキドキしますね?」
「お互いメールで何度もやり取りしていたのに、リアルに会うと、やっぱり何か今までと違う、現実感がでますよね?」
心の緊張の裏返しか、ルリコは矢継ぎ早に話しかけてくる。相手の目を覗き込むように相槌をうった。
しばらくルリコは、好きだという赤ワインを水のように飲む。ボトルが半分ほどになり、ようやく落ち着いた。
「ほんと、イケメン。どストライク。ほんとに私みたいなオバサンでいいの?」
「何を言ってるんです。俺も40越えてるんですよ?世間的には、俺もオッサン」明るく笑いかけ「それにルリコさんは綺麗だし、年より若く見えるし、俺にはオバサンじゃないし」
お互いの視線が絡むとルリコは恥ずかし気に顔をそらした。グラスの赤ワインを煽る。
「ねぇ・・どんな関係を望んでいるの?」
「恋人のように付き合える相手を、俺は望んでいます。ルリコさんは?」
「私も」
思わず苦笑が漏れそうで、ビールを飲んでごまかす。
どんな関係も何も、貴女はお互い相手にばれずに楽しもうと電話で話してたじゃないか。
まるで全てを忘れているようだ。変な人。
「じゃあ・・私の事をもっと知って欲しい」
ルリコは物思わしげな視線を向けて、話し始めた。