俺は正直頭を殴られた気分だった。
俺にこんな思考回路はない。
いつもムカつくだのなめんなだの、単純バカだった。
師範代にもムカつくしかなかった。
てっきりK先輩もそうだと決めつけていた。
が、全く違った。
このときから俺の中で何かがガタンと音を立てて変わった。
それまでは適当がモットーだった。
別に無理する必要ねーぢゃん…と。
俺は恥ずかしかった。
チンケな自分を抹殺したかった。
次の日から俺はまともに勉強を始めた。
道場へも真剣に通うようになった。
適当ではなく。
ただ、K先輩への師範代の罵詈雑言はやむことはなかった。
それから3月程した時の事。
稽古が終わり、俺達は地下にある更衣室前に不動立ちの姿勢で並んでいた。
道場の決まりで、更衣室は狭いため、着替えられる順番が決められていた。
まずは師範と師範代、それと上位の黒帯。
それ以降は師範代の許可が出た者が入室出来る。
それまでは不動立ちでじっと待つ。
その日も師範達が着替えていた。
中からとある先輩の声が聞こえてきた。
自分、Kが高校の時に極限流のマス小山総帥の極限一撃の相談ページに投稿したの持ってるんです、押忍!
マス小山総帥?
あー師範が初代世界チャンピオンになった古巣の道場の総帥か…
なんか雑誌出してるとか…
で、何だって?
と師範
押忍、自分は内弟子になって強くなりたい!みたいな事でした押忍!
総帥はなんて?
押忍、君は知的な人間らしいから通いの弟子でもある程度いけるだろうと、押忍
廊下にいた皆が一斉にK先輩を見た。
先輩は黙って立っていた。
ダメだよあんなの! どうにもならないよ!あんなろくでもない奴なんか!
内弟子なんて1日どころか30分持たないよ〜あはは…
師範の声が響きわたった。
俺はとっさにK先輩を見た。
先輩はただ立っていたが、その表情は一瞬歪んだように俺には見えた。
ひでえなぁ…
俺はまわりを見渡した。
石山先輩達は何とも言えない表情をしていた。
中には嘲るような笑いをK先輩に向ける奴らもいた。
と、師範代が
Kの奴聞いてねーだろうな?と言いながらヒョイと顔を出した。
が、その時どういう訳かK先輩の姿がなかった。
あれ?と訝った次の瞬間、ドアを開けてK先輩が入ってきた。
?