人が本当に驚いた時は声も出ないらしい。
俺は今、それをまさに身をもって証明している。
本当に声も出ない。
ただ見ている事しか出来ない。
俺はおそらく、この日を死ぬまで忘れることはないだろう。バスを降りて、俺の目の前に起こった出来事を。
『が、が・・・』
『骸骨?』
俺の目の前に、骸骨が歩いていた。
平然と普通に。しかも服を着ながら。
夢を見ているのか?あたまが可笑しくなったのか?
目の前に起こっている出来事が理解できない。
だがゆっくりと、この足を前に出した。一歩二歩、 いつもの道を歩き出した。
階段を登り、改札でSuicaを当て、駅のホームへ。
気付いた事がある。
全員が骸骨なわけじゃない。普通に人間に見える人もいる。いつも同じ電車に乗る見慣れた人もいる。
あのオジサンも、ちょっとオシャレで勘違い入った男も、ヨレヨレのシャツきたサラリーマンも、いつも通りだ。
でも見渡すと、約半分の人間が、骸骨だ。
そして、そのほとんどが女性物の服を着ていた。
いや、違う。
違うぞ?
女がいないんだ。
女が全員、骸骨に見えるんだ・・・