「おかえりなさいませサリ様!そちらがルコフィエル様ですね!」
皺だらけの顔の男が近づいてくる。他の小人達と違って胸元に金色の“&”の紋章が刺繍してあるのを見ると、どうやらここの最高責任者のようだ。
『ルコフィエルじゃないよ、この子はコウ』
「失礼しました。はじめましてコウ様。メリード通信施設長のミジコです」
「はぁ…どうも」
何となく微生物のミジンコを思い出した。
「いやぁ、まことに神々しいお方だ!この光輝く金色の髪に真っ黒な瞳!そして知的な表情!」
髪は染めただけだし、知的と言われても成績はいつだって中の下。しかしそう言われて悪い気はしない。
『ミジコ。コウにバトルスーツを頼む』
「はい。もう準備してありますよ!コウ様、どうぞこちらへ」
ミジコは部屋の中心にあるマンホールの蓋のような物の上へ移動させられた。続いてミジコもその上に乗り、手元の青いスイッチを押すと、その蓋のような物は二人を乗せてそのまま下降し、パイプを通って別室へと移動した。
着いたのは先程よりもずいぶん小さな部屋で、トランクが一つおいてある以外は何も無い。
「赤いスイッチが上り、青いスイッチが下りとなっておりますのでご使用の際はお気をつけ下さい」
「あの〜ミジン…ミジコさん。バトルスーツって、貴方達が着てるような形…ですか?」
「いいえ。これです」
ミジコはトランクを開けた。
「このバトルスーツは我が星の最高傑作です!スポンサーは私であるということをお忘れなく」
ミジコはバトルスーツを取り出した。
トップスはノースリーブのジャージみたいな形で、色は白に近いシルバー。生地はサテンに似ている。それと白のロンググローブ。ボトムは綿に似た生地の黒の長ズボン。靴は黒くて異常に軽い。
とりあえず、コウはシルバーの全身タイツじゃ無くて良かったと心から安心した。バトルスーツというより普通の私服みたいだから着やすいのも良いし、軽くて着心地が良く、全身にフィットする。
「このバトルスーツならちょっとくらいの攻撃は弾き飛ばしてしまいますからね!」
「…“ちょっとくらい”じゃなかったら?」
「………………。」
コウは再度、死を覚悟した。
「では中心部に戻…」
ミジコが言いかけたその時。けたたましいサイレン音が施設中に響き渡った。