『ずっと?』
『うん。ずっと見てた。俺は俺なりに頑張った。なんとかしようって』
『…なんとか?』
『いやらしい意味じゃなくて、なんとかしようって』
『いやらしい意味?』
『いやらしい意味…』
噛み合わない沈黙が続く
『あのさ、君は…わからないのかな?』
『いやらしい意味ですか?』
『そう。』
『…』
『あのさ恋愛したことある?』
『恋愛?』
『かっこいい人みてキャーとか、ドキドキする感じ』『動悸はしょっちゅうでしたけど』
『…違う!小学生の時とかにさ』
『院内学級には通ってましたけど』
『院内学級?』
『はい。病で学校に行けない人が通う病棟です。でも通うと単位はもらえるんです。うちの病院は』
『えっ?ねぇいわゆる普通の小学校とかさ』
『私、3つの時から病で、小学校にはトータル一年しか通えなかったんです。』『…高校は?』
『元気になったら通信制に通うつもりでした』
『そうなんだ…病重かったんだ。辛そうだったもんな。血流悪かったし、俺頑張ったもん。むちゃくちゃ』『頑張った?』
『うん。なんとか君に合うように拒否反応も少なくって。で人生で二番くらいに頑張って働いたし、よい状態でいようって』
『…拒否反応?頑張った、血流?…』
『もうわかった?ファイナルアンサー!』
愛莉は心臓を指差した
『大正解!』
『えっ?…もしかして持ち主さんですか?』
『そうだよー、こんなにイケメン、身長180センチ体重52キロ、本当は54キロの運動神経バツグンの心臓だからね』
『…取り返しにきたんですか?今は私のですから』
愛莉は心臓をぐっと押さえた
『取り返しても体ねぇし』『そうですよね』
『丁寧に扱えよ。ファンなら泣いて喜ぶ、すんげぇレアな…』
『レア?焼いたら移植できないですよ』
『違う!本当に君は天然か?』
『天然…』
『そこから説明するんかいっ』
『すみません、本当に私疎くて…』
男は読んでいる本をみた
『心臓病の本、世界の旅、ダ・ヴィンチがみた世界、サイエンス、Times?…人ゲノムとは?…なんじゃこりゃー俺わからないわ。あのさ普通のアイドル雑誌はないの?』
『見ますよ。ジュノンとか明星とか』
『いい感じ!SMAPとかトリプルとかさ』
『はい知ってますよ、NHKに出てましたよね』
『紅白か(笑)俺ら出てない』