踏切の前に立つ。もう何もかもがいやになってしまった。アルバイトはがんばってもがんばっても低賃金。苦しくて苦しくてたまらない。
電車が来た。オレは飛び込もうとした。すると、誰かが腕を引っ張った。
「り、梨花ちゃん」
勤務先の塾の生徒であった。
「先生。死んでる場合じゃないよ。プロ作家になるんでしょ?」
「う、うん」
「じゃあ、生きなきゃ!」
オレはわんわん泣いた。優しい教え子を持って、オレは幸せだ。
お礼に、オレは梨花ちゃんをファミレスに連れていってあげた。
「先生。ほんとにおごってもらっていいの?低賃金なんでしょ?」
「なあに。死ぬのを止めてくれたんだから、これくらい当たり前さ」
「嬉しい!」
すると、警官がやって来た。な、なぜ。
「援助交際だな。逮捕する」
「ち、違いますよ」
「うるさい。じゃあ、お前らは親子なのか」
「違います」
「じゃあ、援助交際じゃないか」
警官は梨花ちゃんに手錠をかけた。
「なんでーーーー」
「梨花ちゃん。刑務所はつらいだろうけど、勉強がんばるんだぞ」
「そんなあ!」
梨花ちゃんはパトカーに乗せられた。
「先生。助けてえ」
「手紙書くよ」
「ふえーん」
パトカーが走り出した。
「さてと」
オレは書斎に戻り、小説を書き始めた。