「あー、もうやだ」
「あら、ピーターさん。どうしたんですか。ずいぶんお疲れのご様子ですが」
「あ、ティンカさん。……ちょうど良かった。聞いてくださいよ」
「いやです」
「ええっ、そんなぁ。先輩として後輩の不平不満を受け止めてくださいよぉ」
「先輩の立場にいる人がみんな、君が望むような機能を持っているとは限りません。それは幻想です」
「むしろ余計な機能しか持ってないのが大半ですけど……。いや、夢を叶えるのが僕達の仕事じゃないですか」
「そうですね」
「だからですね、舞台裏ぐらい、クライアントの不条理で非現実的なオファーに対する愚痴を言い合っても良くないですか?」
「チリンチリン」
「何ですかそれ」
「最近はこうした部分もメイキング映像と称して流通しますから。ほら」
「あっ、ほんとだ。カメラがある」
「そう。私たちは常に監視され、命令される立場にあるのです。優しく素敵な存在でなくてはならない。そして、その権利義務は私たちが忘れ去られるまで続いていく」
「じゃあ、僕達の利益って何ですかね?」
「多分、一時的にでも奇跡や永遠の象徴になれること、でしょうか」