そうだ。久しぶりに、通っていなかったジムに行ってみよう。運動して汗を流せば、このところのモヤモヤなんて、吹き飛んでしまう筈だ。陽子は、そう思った。
「陽子?陽子もジム?俺も、会社帰りに時々寄ってるんだ。」
偶然にも、そこにいたのは、弘だった。
「じゃあ、お揃いの靴でも買ってトレーニングする?旦那には、内緒よ。」どうしたらいいかわからなくなって、とっさにそんな言葉が出てきた。
やはり、俊樹には、黙ってこのプラスアルファの関係を続けてゆきたい気持ちが、垣間見えているようでむずがゆかった。
「駐車場に車停めてあるから、家の近く迄、送るよ。外、暗いし、陽子目が悪いんだから。」
(今の言葉は、友達としてなの?それとも?それ以上を期待してもいいの…?)
「はい、お嬢様。お気をつけて。」
弘の、車に乗せるエスコートの仕方は、昔の通りだった。弘と居ると、不思議とまたシンデレラ気分になれた陽子だった。
「じゃあ、此処で降ろすよ。ゆっくりおやすみ、シンデレラ☆」そう言って、弘は、陽子に軽くキスをした。
陽子は、胸が高鳴るのを抑え切れなかった。
(何なの?この甘酸っぱいトキメキは…。)
陽子は、少し赤面していたが、周りが暗いので、弘には、バレないと思った。
しかし、弘は、
「可愛いよ。今の陽子、何だか昔より色っぽくなった。…俺、陽子を選べばよかったかな。…なんて、な☆」
と、照れた様に言った。
今の陽子には、それが、涙が出そうなくらいに、嬉しかった。
[続く]