僕は夢を見た。
いつもの居酒屋でオバケと一緒に飲んでる夢だ。
「半年前にあんたに声をかけられた」オバケの前には日本酒と焼き魚があった。「それから色々な事を話した。確かに楽になったさ。でもね、そのおかげで俺は空っぽになった。あんたが悪いんじゃない。うまく説明できないけど」
店の中を見回すと、そこには誰もいなかった。オヤジもいない。
「誰かが俺をオバケと呼んだ」彼は続けた。「いくら喧嘩が強くても、スタジオミュージシャンとして成功したとしても、俺はオバケだった。誰も本当の俺を見ようとしない。つまり、俺はそこにはいないんだ」
本当のオバケ?
「でもあんたは本当の俺を見てた。あんたにはわからんかもしれんが、俺にはわかる。だから俺は話した」
話し終わると、彼はどこかに消えた。去ったのではなく、文字通り、消えた。
おい、待ってくれ。
そう言いたかったが、声がでない。体も動かない。
「じゃあな」どこからともなくオバケの声が聞こえた。
大丈夫、みんな夢さ。誰かが言った。
もし夢だとしても、大丈夫じゃないんだ、と僕は思った。
「引き金は引かないよ」オバケが言った。
目が覚めた。
朝6時。
どこかから銃声が聞こえたような気がした。