田中二朗は中2病だ。
それは彼が14歳であることや響きがカッコ良さげな外国語を叫ぶ趣味があること、ダークヒーロー物や悲劇的結末の娯楽作品に憧れを持っていることには一切関係なく、彼は中2病になってしまったのだ。
彼の体は14歳のまま、時を止めてしまい、炎を操る能力を得たのである。
そんなある日、彼は全身黒タイツの、キーキーと呻き声をあげる集団に誘拐されてしまった。
しかし、そんな彼の目はむしろ、期待に躍っていた。
(これから俺はどうなるんだろう。能力はもうもっているし、彼らといっしょに悪事を働くんだろうか……)
彼は自分がそこから組織を裏切って、やはり平和な世界を守っていくと決意をするところまでを想像した。
そのうち乗せらていた車は止まり、二朗は手術台のうえに運ばれていた。
「暴れられたら面倒だ。麻酔注入しろ」
「へ?」
二朗は鋭い痛みと共に、なんの葛藤も苦悩も信頼できる友人も愛する恋人も得ないままに意識を失い、二度と目覚めることはなかった。
のちに二朗を解剖して得られたデータをもとに生まれた怪人が組織に反抗し、壊滅させたのだが、当然ながら二朗の知るよしはなかった。