かつてその痛みは、理解してはいても、共感には程遠かった。
いくど経験しても、堪え難く慣れることのない痛み、癒えることない傷、一生埋まることのない空白。
それは、とても辛くて、しょうがないのに、どうしようもなく、逃れられない
その日を、どんな覚悟を持って迎えたところで、揺らぐ気持ちを抑えるのは、到底不可能だ。
何が揺らいでいるのか? それは今までいた自分の世界。
永遠に揺らぐはずのないと信じた、でもそんなことはなかった世界。
病床に横たわる君の足に触れる。とても白い。
君は走ることが大好きだった。誰よりも早い自分を君は誇っていた。その姿が、僕は…。
…もういっそのこと、全部投げ出せてしまったら良いのに。
感情のままに、錯乱している心に任せて、この胸に迫る嘆きを叫び散らせたら良いのに。
深い眠りにいる君には一切届かないのだろうけれど。
こんな時でも世間体を気にしてしまう自分が、たまらなく情けない。
でも、どうあっても、その時は絶対にくる。きてしまう。
君の身体から何かが抜けていくのが、見えた。
ねぇ。ポチ…。
君は僕といて幸せだったかい?