早朝、小鳥が庭先で地面をつついている。その中を駆け抜けるとバサバサと音をたて、飛び立っていく小鳥たち。
舗装されていない村の道には凹凸があり、走りにくい。コケそうになるのを足裏の体重移動で堪える。
春の訪れを感じさせる青空と暖かい風を肌に感じながら、彼は森へ駆ける。
何者にも縛られず走るのはなんと気持ちが良いのだろう。
誰もいない早朝の森への道を一人で走るのが、彼、ゼシル・カーテスの唯一の楽しみだった。
時はバルタ史歴1657年、2月16日。
この日、バルトリア王国の領地内にあるケルタ村という小さな村で、新たな歴史が始まる…はず?