バルタ史歴1657年2月16日。
この日ゼシル・カーテスは上機嫌だった。
「楽しみだなぁ」
早朝に走るのも好きだが、もう1つの趣味があった。それは森を探索すること。
しかし、ケルタ村では村の裏側に位置する森、ケルタの森ー通称:悪しき民の森ーに入ることを禁止していた。
名前の由来は森で起こる現象が原因だった。
ケルタ村の周辺は開拓地であったため、森を切り開かれて作られた。しかし、悪しき民の森に入っていった開拓民たちは、森の中で神隠しに会った。命からがら逃げてきたものたちは原因不明の病でことごとく死んでいった。
それからというもの、ケルタ村の開拓民の血筋たちは悪魔が住んでいるとして、森への侵入を禁じている。
だが、ゼシルはそんな村のルールを破っている。逆にスリルを楽しんでいるのだ。
しばらく走ると森が見えてくる。柵も何もない。どうぞ、入ってくださいと言っているようなものだ。
さっそく鉈を取り出し、昨日まで掘り進めてきた樹海の穴を進んでいく。
……………。
どれくらい歩いただろうか、顎から垂れる汗を拭いながら開けた場所に出る。
昨日偶然見つけた、樹海の部屋。木々が半球の形にくり抜かれた空間だ。
その中央には箱が1つ。