続たまらんく哀しい4

シャイン 2015-02-16投稿
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高校を卒業し
大学で格闘技を本格的に始めて
大学最上級になるときには
警察で逮捕術を教えるほど僕は腕を上げていた

大学最上級時に
田舎に帰った時に

偶然
前から麻美が歩いてくるのが見えた

連れの男ともども
カタギではなく
精一杯虚勢を張っているとしか見えなかった

麻美は僕を見つけると凄んできた

「アンタ(僕)のせいで人生狂ったわ…慰謝料だしな」

連れの男が
ドスらしきものをちらつかせる

連れの男を
良く見ると
あの小学生のクラスの男の子のリーダーだった男だ。

男も凄んだ
「メクラはメクラらしくしとけ」

僕は男が早く刃物抜かないかな
と呑気に間合いを図った

男は余りの僕の余裕さに戸惑っているが

沈黙に耐えられず
刃物を振り上げ
下ろしながらかかってきた

僕はスローモーションのような動きを
楽しみながら

サイドに半身で避け、振り下ろされた刃物を空振りをさせた
そして刃物を持っていた手首を掴み
力任せにネジ上げた

ビリ…
靭帯が伸びる感覚が僕にとって快感になった

男は、のたうち回った

僕は男に叫んだ

「さっ今から虫けらみたいにボロボロにしたろか」

いつもの脅し文句だが

その日は初めて違和感が体を通った

自分で言った言葉だが鮮明にある記憶がよみがえった

虫けら…

転校初日
僕は昆虫採集を拒否した

強制する先生に

「テメエ(担任教師)みたいな残酷にはなれねぇよ」と言ったのが
担任教師との対立の始まりだった

クラスで昆虫採集を拒否したのは僕と由美子ちゃんだけだった

帰り道で
転校初日の一人で帰る僕に由美子ちゃん走って追いつき
隣に並んで言った

「宇野君(僕)は優しいね…一緒に帰ろう」

僕は踏みつけられ続けた幼少期から

踏みつけられない処世術を覚えて

そして今や
力で相手を叩きのめす側の人間になっていた

心の中で
長い間封印していた
由美子ちゃんと幸さんの暖かさを思い出した…

僕はそれ以上の攻撃は控えた

深すぎる哀しみから
逃れることはできずに

ずっと罪悪感にさいなまされてきた

たまらんく哀しい…

僕はそれから
10年の歳月を経て
人生の転機に
幸さんと由美子ちゃんの住んでいた
公団アパートに行くことになる…


『哀しみの果てに』に続く

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