狼が遠吠えでもしそうなほどの、見事な満月が空に浮かんでいる。
満月の光に照らされて、道に二人の影が浮かび上がる。
少年と、少女のようだ。どちらも、背丈から見て、高校生だろう。
少年が少女の手を引っ張っている。
少女は顔を下に向けていて、愛らしい瞳に、涙が浮かんでいる。
「おアツいねぇ、お二人さん」
二人の頭上--少し高い石垣の方から、男の声が降ってきた。
「うるさいっ、自分は何もしてないクセに」
少年に怒鳴れたことが、心外だとでも言うように、男はため息を一つ。