あなたの声に

 2006-09-23投稿
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瀬戸 千鶴。

桜華高校1年生、春。

私は今日もテニスコートを見つめていた。

「はぁ・・・」

大きなため息をつく。


今週は1年生の仮入部期間であり、
色々な部活を見る唯一の機会だった。


「千鶴〜?
 やっぱりココかぁ〜」


斉藤 佳奈美。

小学校からの親友で、偶然高校も一緒だ。


「あ・・・うん。
 やっぱテニスっていいね・・・」

佳奈美は困った顔をして口を開く。


「千鶴・・・
 もう忘れなよ。
 ホラっ!ここの学校って、
 吹奏楽部も有名だよッ。
 全国大会常連さんじゃんッ!」


「ぅ・・・うん・・・。
 でも、もうちょっとココ、
 見てていい?
 後から行くから・・・」

「あぁ・・・そう?
 わかった。待ってるね」


『忘れなよ』


佳奈美の言葉が頭をグルグルと
何回も駆け巡る。

なんでこうも簡単と言えるの?

忘れられるはずないじゃない。

私の気持ちなんて・・・

誰もわからない・・・



いつもこんな事を思ってしまう自分に、
嫌気がさしてしまう。

いつからこんなになってしまったんだろう。


私は、行き交いするテニスボールを目で追いながら、鮮明に残る記憶をかき回した。

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