(いつも自分から退いちゃうんだな、私は・・・。)
梨香は、自分が情けなかった。
もっとも、この男性恐怖症は、最近始まったものではないから、自分のパターンには、収まっているのだが。
 翌日、登校すると、親友の翠は、機嫌が良かった。
 「あのね、私、今日ついてる感じがするんだぁ。ふふ♡」
 如何にも、人生に春がやって来たかの様である。
  「いったい、どうしたっていうの?」
 いつも、大体、梨香は翠の聞き役で、こんな時には、優しく聞いてあげるのだった。
   「あのね、聞いて欲しいんだけど、わたし彼氏ができたの!!それで、今日初めてデートするの。」
 
 (私だって、いいことあったんだもん!)
梨香は、内心思ったが、秘密主義を貫いている為、口には出さなかった。
  「へぇ、良かったじゃないの。で、どんな人?年上?それとも、年下?」
   よくよく聞いてみると、相手は、大学生で翠のお兄さんの同級生で、付き合うことになったらしい。
年上が好きな梨香は、少し羨ましかったが、自分にそういう話がまだ早いのは、自身で理解していた。
でも、翠みたいに、突然その時がやってきたら、自分の場合、上手く対応出来るだろうか?
 そう考えると、一抹の不安は、拭えなかった。
                                       [続く]