やがて歌い終わった髪の長い美女はゲルダの方を見て、こう言った。
「あなたにはお礼を言わねばなりません。あなたは私をあの童子から解放してくれましたから。あの童子はああ見えて、600年も生きた恐ろしい化け物なのです。石像の振りをして油断させては、あやまって森に入ってきた旅人を殺してその肉を喰らうのを何よりも楽しみとしてきた奴なの。あなたも早く逃げないと危ないわ。さあ早く、目を覚まして!」
そのとたん、ぱちんとゲルダの目が開いた。
しばらくゲルダは自分がどこにいるのかわからなかった。たしか、霧の深い場所で青い髪の女と出会っていたはずなんだが。
しばらくすると現実が戻ってきた。
おれは廟の中で休んでいたんだ。そうだ、おれは盗人だ。王国の至宝を盗んだ。捕まれば殺される。