時計は午後5時を指している。
「よーし着いたぞ」
一階の男子トイレに着くと基樹がまたもやはりきりながら言う
「で?誰がドア叩くの??」
基樹の友達の雄作が口を開いた。
俺は特に理由もなく
「基樹じゃね?」
と言ってみる。
「はぁ!?なんで俺!??」
そう基樹が言うと俺はすかさず、
「もとあと言えばお前が試ったんだろーが!!お前がやらなきゃ俺帰るかんな」
「チッ・・・わあったよ」
「分かればよろしい」
俺は上目線で基樹に言う。
すると基樹はおそるおそる一番奥のトイレのドアの前に立ち、「ごくっ」と息を飲んだ後、大きな深呼吸をし
「トントントン」
と、ドアを3回叩いた。
「叩いたぞ!!」
と大声を出しながら慌てて基樹がコッチに向かって走ってきた。
やっぱり基樹もなんだかんだ言って怖いんだろう。
俺は軽い優越感に浸っていた。
シーン・・・。
ドアを叩いたものの一向に花子さんが出てくる気配などありはしない。
「次寛叩いて来いよ〜」
基樹が言うと俺はふざけんなと言わんばかりに
「はぁ!??」
と返した。
「なんだよ?お前怖いのか??」
基樹がニヤニヤと笑いながら小バカにしてきた。
「んな訳ねーだろ!テメェと一緒にすんな!」
怒鳴るように俺が言うと、
「じゃぁ叩いて来てくれよ」
とすかさず基樹が言う。
「はいはい分かった!!叩いてくればいーんだろ!??」
俺はちょっとばかしムキになっていた。
「さすが寛くん!!!男前!!!」
基樹が茶化してくると
「うっせ」
と睨みつける。
そして俺は一番俺のトイレの前に立った。
「叩くぞ」
そう宣言して
トントントントン
基樹より一回多く叩いた。
やっぱり周りはシーンとしていて、花子さんが出てくる気配などありはしない。
俺はちょっとホッとしつつ、
「やっぱ花子さんなんて出て来ねーよ!」
と言うと
「やっぱりデマかぁ」
基樹がちょっと残念そうに言った。
「デマに決まってんだろ!帰ろうぜ!」
「そうだなー」
皆ゾロゾロとトイレを出て行こうとしたその瞬間、
「クスクス」
!!!!
「今・・・なんか聞こえなかったか??」
俺がおそるおそる皆に聞くと、
「ぁあ・・・俺も聞こえた」
基樹もやっぱり聞こえたらしい。
「あたしも・・・」
やっぱり皆聞こえてたみたいだ。
俺は嫌な予感がした。