ゲルダはとっさに嘘をついた。
「森の中でこれを拾った。ちいさな泉の底できらきら光っていたんだ」
「ほうほう。お前さん、それは拾い物じゃった。もう一度、見せてくれんかの?」
老人がそう言って手を差し出すので、ゲルダはその手に女からもらった銀貨を一枚載せた。
「それはあんたにあげる。約束だからな」
ゲルダがそう言うと、老人は喜色満面で受け取った。
主婦が料理を運んできた。香草とスパイスと焼けた鶏肉の匂いが立ち込めた。ゲルダは再び空腹を強く意識した。
主婦は満足げにその様子を眺め、「さあ、たんと召し上がれ。きちんと食べないと力が出ませんよ」と言った。