恋の涙?

MINK  2006-09-24投稿
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私は、八時を少し回った位に駅前のカフェに着いた。
店内を見回したが私を見るものはいなかったし、それらしい男すらいなかった。
「騙された?」
心の中で思った。今頃になって別れた恨みとか…。

どうでもいいけど。

取り敢えずコーヒーを頼み、一番分かりやすい窓際の席に座った。
外をぼんやりと眺めていると、雨が降り出してきた腕時計に目をやると時計は、八時二十分を指していた。
自分から呼び出しておいて遅れるとは…。
不意に人の気配を感じて、顔を上げた。
「いつからいたの…?」
「そうですね。五分くらい前ですか」
「そう…。気が付かなくて」
「いえ」
彼がいつやってきたのか分からなかった。そんな事、あり得ないだろうに。
でも、窓の外を見ていたから気が付かなかったのかもしれない。
違う!だって窓には私しか映っていなかった。
私は混乱したが、私の錯覚だと思うことにした。
「で?メリットって何?」
「いきなりですか?」彼は、電話口と同じ優しく困ったように笑った。
「だって、智沙希、僕の事覚えていないでしょ」そう続けて、寂しそうに笑ったまま目線を落とした。
「正直に言うわ。分からない。ごめんなさい」私も申し訳なくて目線を落とした。
「いや。確かに長く付き合ったわけでもないし思い出もなかったと思うから…智沙希にとって」
「ただ、僕にとっては最初で最後の本気だったから」
「最初で最後って…」
何だか大げさな気がしたが、私は話を本題に戻した。
「で?用件」
「そうそう。僕と三日間だけ付き合って欲しい。三日後に君にプレゼントを贈る」
「は?それ断る権利あるよね?」
私は彼に聞えるくらいの大きなため息を付いて見せた。
「あるけど。今よりもっと不幸になるかも」そう言って今度は意地悪く笑った。
私は、もう一度大きなため息を付いて言った。
「脅迫してんの?」私が睨みながら言った。
「お願いします。三日間だけ僕に智沙希の時間を下さい」そう言って、テーブルにおでこを付けた。
周りの客がじろじろ見たり、くすくす笑ったりしていた。
私は、もう一回大きなため息を付いた。

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