あなたの声に

 2006-09-24投稿
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気付いたら、あの曲はもう終わっており、
ノリの良いアップテンポな曲に変わっていた。


私はある楽器に目を惹かれた。


いや、楽器じゃない、人に惹かれた。


一際輝くあの人。


よくテレビで見るドラムをかっこよく叩いている。

生で見たの初めてかも・・・。


その人はなかなか端正な顔立ちをしており、サワヤカ系なスポーツマンって感じだった。


遠くから見ていたため、よくわからないが・・・。



私は曲を聴くのではなく、その人を見ていた。


そのためか、演奏はあっという間という感じだった。


帰り道。
佳奈美とまだ慣れてない電車に乗って、
地元へ向かう。







「演奏すごかったねー」

「そうだね〜。
 千鶴は、なんか部活入るの?」


「え・・・」


答えられない。


別に特に入りたい部活なんて無い。

できればテニスがしたいけど、

もうそんなのできる体じゃない。


「まだ・・・決まってない」


「そっか・・・。
 ウチはね、吹奏楽部に入りたいんだ。
 ウチ、中学でも吹部だったじゃん?
 またやりたいなーとか思って」


「そ、そうなんだあ・・・」


私の夢はもう絶たれてしまった。

好きなものはもうできない。

テニス以上に好きなものなんてないから。


これきり、二人は沈黙してしまった。


ガラスの向こうに写るネオン。


涙で霞んでよく見えない。


どれくらい経っただろうか。

私は寝てしまっていたみたいだ。


「着いたよ〜」

佳奈美の声で起こされた。

「ん〜」

重いまぶたをこすりながら、
立ち上がる。


「千鶴〜、しっかりしてよ〜」


ひょいと電車から降りる佳奈美。

私も続いて降りる。


「じゃ、ウチ今日塾だからこっちね。
 千鶴、寝ぼけないでよ〜? 
 ばいば〜い」


「ばいば〜い・・・」


佳奈美は走って私の帰り道と逆のほうへ
消えていった。


私はゆっくりと歩きだす。

あのドラムの人が頭から離れない。








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