「数が合わないってどういう事だ?」
「私と牡丹の1つずつの魔痕をムカイに移すはずだったが、まさか牡丹が両目に魔痕を発動出来るとは予想外だ…」
大和家の象徴であり、誇りでもある魔痕を根絶やしにしない為、他人に移すはずが1つ余るという緊急事態に現・大和家当主、大和八重桜が決断する
「とりあえず牡丹の魔痕をムカイに移す…」
胸の前で手を合わせて静かに息を吐くと八重桜の後ろに阿修羅が現れ、合掌している第1組手が牡丹とムカイの目の前に止まる
「始めるぞ…」
瞳に浮かぶ魔痕が阿修羅の手に移り、腕の中をボコボコと暴れながら反対の腕へ移動してムカイの瞳に移した
「あぁああああぁあ!!!」
両目を抑えながらのたうち回るムカイに対し、気絶し倒れる牡丹
「オルゾ…二人を連れて行ってくれないか…」
阿修羅が消え、全身の力が抜けて座り込む
「何を言っている。お前も一緒に行くぞ!」
「もう私には体力を使い果てた。1日に阿修羅を2回も使ったからな…一歩も動けないよ」
「お前の魔痕はどうするんだ?」
返答がない。だがオルゾは八重桜のある覚悟を感じ取り、牡丹とムカイを左手で抱えて八重桜を右手一本で持ち上げる
「んんん!!!」
「オルゾ…何をしている…私を置いて行くんだ…」
「死なせない!お前は生きなきゃ駄目だ!」
三人を抱えてゆっくりと移動しているとオルゾが外したイヤホンから声が聞こえてきた
「オルゾ君、今どこにいますか?まだ現場にいるなら早く逃げた方がいいですよ」
疑問に思ったオルゾはイヤホンを着け、トカイ.キュべに話しかける
「おい…逃げろってどういう事だ?」
「約10分後、斑鳩の地に核が落とされます。近くにいるなら早く逃げた方がよろしいかと…」
「マジかよ…10分じゃ三人を連れて逃げるのは無理だな…」
「大和八重桜を置いていけ。置いて行けば命だけは助けてやろう」
闇の手が地面から現れ、握られた手を開くと龍.老酒が現れた
「オルゾよ…今なら裏切りも見逃してやろう。だから素直に大和八重桜を置いて行くんだ」
僅かな時間だが、頭をフル回転させてこの場を乗り切る術を考えたが見つからない
「オルゾ…私を置いて行け…子供達を頼む…」
八重桜を降ろす
「いい判断だ…」
そして二人の子供も降ろした
「誰が渡すって言った?戦闘の邪魔だから降ろしただげだが?」
「愚かなり」
炎の獅子が龍.老酒の目の前に降り立ち、咆哮と共に炎の鬣が龍.老酒の周りを包み込む
「これでしばらく時間を稼げるな」
すると、気を失ってるムカイの頬を叩いて起こす
「いいかよく聞け!牡丹を連れて遠くに逃げるんだ!上手く遠くに逃げたらコイツの所に行くんだ。コイツなら何とかしてくれるだろ」
オルゾは自分の携帯をムカイに渡した
「緩い炎だな」
黒い手が炎を消し去り、八重桜を掴む
「八重桜さえ手に入れば十分だ。時間もあまりない…これで失礼させてもらう」
足元から広がった闇に沈みかけた時、炎の獅子が腕に噛みついた
「逃がす訳ないだろ。お前は俺と一緒にここで死ぬんだよ!お前が発射した核でな!」
黒い手に掴まれている八重桜がフッと笑う
「おのれぇぇぇ!」
数分後、斑鳩に核が落ちた。龍.老酒とオルゾはギリギリまで戦ったが龍.老酒が一瞬の隙をついてオルゾに勝ち、八重桜とオルゾを連れて脱出した。
その後龍.老酒は魔痕を手に入れようとしたが出来なかった。龍.老酒と言えどやはり魔痕の呪いには勝てなかったのだ
龍.老酒は仕方なく魔痕を諦め、八重桜と駒鳥そして天女魚を操り、配下に置いた。
そしてオルゾは天女魚の魔痕を無理やり移植させられ呪いにかかってしまった。その後オルゾはその場から脱出し、姿を消す事に