〜大庭綾香は死んだ〜
目の前にいる綾香が告げた内容に結奈の理解は追い付いていなかった。続けて綾香はこう述べた。
「目の前に生きてるっちゅうのにな!ハハハ!まあ、所謂スピリチュアル的に精神的に死んだという意味!アタシの親か、それとも誰かの意図でこの治療に至ったと考えるべきやろ。だから結奈ちゃん。」
綾香は結奈の両肩をそっと掴んだ。
「アタシ記憶無くして性格も多分激変してるからな、そんなん親友呼ぶのは無理あるやろ。だから結奈ちゃんが縁切る言うてもアタシは構わっ!て!ええ!?」
結奈は綾香を抱きしめ、その直後に泣きじゃくった。
「私をちゃん付けなんて小学校以来だけど・・・何でもいい!!綾香が立ち直ってくれたならもうそれで十分!あと、簡単に絶縁とかそんな言葉出すなあ!馬鹿かよおおお!?」
綾香はここで初めて緊張が解け、頬が弛んだ。
「フ・・・アタシを馬鹿呼ばわりか・・・まだまだやなアタシも。」
数分経過し結奈が落ち着くと綾香は瞬く間に補給を済ませ自身の身支度も整えた。
「ふー、濡れタオルで髪と身体拭いただけやけど随分マシやな。服も教科書でしか見たこと無いような人民服やけどボロボロの寝間着で走るよりはマシやもんな。化粧もその辺に転がってた物があったからやってみたんやけどどや?」
結奈は僅か数分で身支度を整えた綾香の行動力と綾香の姿そのものに驚いた。
「綾香、化粧の感じ変わったね。まあ、元々化粧はいつも光の速さでやってたけどね。いいと思う!なんか人間に戻った感じ!前は完全に妖怪だったもん!」
二人はケラケラ笑いあった。
「前のアタシどんだけやばいねん!結奈ちゃんお手洗いは大丈夫?そろそろここを出るよ!」
綾香は表情を再び引き締め荷物を抱えてシェルターの奥へ向かった。
「あ、綾香?そっち出口じゃないよ?」
「せやねん、と言うわけで結奈ちゃんに重大任務を授けまーす!!」
怪訝な表情を浮かべる結奈に綾香は無邪気な表情で返した。