「結奈ちゃん。もう大丈夫やけん。このカプセルの中で寝とき」
敵勢力から逃れた桜井結奈と大庭綾香は再び逃走用の車両を入手し
無事に避難シェルターへたどり着いた。このシェルターは先の大戦により放棄された航空戦艦をそのまま避難所として開設していた。この航空戦艦にはトーチカとしての能力こそは残されていたが敵勢力の制圧の対象とはならずそのまま堅牢な公共施設としての役割を果たすのみだった。この航空戦艦には、病院機能も後付けで設置されておりそのまま避難所下に於ける診療所が開設されていた。
気分不良の状態で逃げていた結奈は到着と同時に気を失い、運よく空いていた医療カプセルに直ちに収容された。
綾香は食料確保のために診療所を離れ、施設の廊下を歩いていた。
「医療設備があるのは有り難いんやけど何で戦艦の廊下と一切繋がってないんや・・・後付け遠回りにも程があるやろ。道、覚えとかんと」
廃棄書類の中から戦艦の内部資料を見つけたものの先程の医療設備を備えた部屋の情報はなかった。完成当時から資料が更新されなかった模様だ。
綾香は指定された部屋にて配給を受けるとその部屋の周囲を見回していた。
ここがかつては戦艦を動かす動力源を備え付けていた場所であることは容易に想像が出来た。部屋の中央に鎮座する黒焦げた巨大な鉄塊をしばらく眺めていると綾香の頭の中に語りかける声を感じた。
「私の欠片・・・探したぞ!」
次の瞬間、綾香は黒焦げた鉄塊から伸びた触手に全身を覆われ何が起きたのか理解出来ない内に意識を失った。
やがて綾香は意識を取り戻し起き上がるとそこは錆びれた現場用のプレハブ小屋に無理やり敷き詰められた畳とちゃぶ台が広がっていた。そしてそこには記憶は無いが何故か名前だけは覚えている男がちゃぶ台越しに正座していた。
「アタシ、あんたのこと知ってる。峰崎・・・龍雅・・・」