「ちょっと、何あれ？」
「えっ！ 目合せない方がいいよ！」
「おい、あれかなりヤバクねぇ〜」
「ああ、ヤバイ感じだよなぁ」
莉央を横目に学生たちは口々に聞こえないように話し始めていた。
「あっ、そろそろあたしも行かないとね」
その場に居ずらくなり、イスから立ち上がると莉央は独り言を呟きながら、手が痛いのを必死に我慢し、何かを思い出したようなふりをして、小走りにそこから逃げ出すように食堂を後にした。
――その夜――
莉央は痛む手をかばいながら、ベットの上でふて寝していた。
静かな莉央の部屋で彼女の携帯電話から、突然、今、流行っている、お気に入りのメロディーが心とは裏腹に軽快な機械音で鳴ると、電気すらついていない、暗くひっそりとした部屋中に流れる。
ベッドに横になっていたが飛び起き、慌てて机の上にある携帯を包帯がしっかりまいた痛む手で必死に取ると、着信の途中で、通話ボタンを手が痛む事も感じさせないぐらいの勢いと、素早い反応で力強く押した。
ピっとボタン音が鳴ると、顔に携帯を近づけ話し始めた。
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